らも―中島らもとの三十五年  中島美代子

らも―中島らもとの三十五年
中島 美代子
集英社 (2007/07)
売り上げランキング: 378

故中島らも氏の妻「ミーコ」こと中島美代子によって、夫「中島らも」が、どのように生きたのかが、赤裸々って言葉が赤面し、素っ裸で逃げ出すぐらいの内容でありながら、淡々と、日記をめくりながら「あら、こんなこともあったわね。」って感じの独白調で語られる。

この本を読んで感じるのは、この妻でなければ、間違いなく、中島らもはありえなかっただろうなってこと。いかにして、あの奇才、中島らもが生まれたのか、らも氏の著作だけでは、見えなかった部分が「あぁ、そうなんだ」って、すうっと腑に落ちる感じ。

妻は、酒、ドラッグ、友人に差し出されるセックス、愛人ふーことの関係、夫のすべてを受け入れ許してしまう。
夫である「らも」は、「どこまでも許される」ということに対して、限界を求め、もがき続けながら、ついに果たせなかったのではないのかな。

つきつけられた正直さは、汚れた心に鋭い刃となって斬りつける。
大いなる「愛」は、不完全でひ弱な自尊心を、窒息させる。
絶対的な肯定は、ときに孤独であることよりも、絶望を抱かせる。

らもファンには必見の一冊です。

スカイ・クロラ (森博嗣:中央公論新社)

えー、すごく久しぶりの更新です。

長らく、入出力不全(体というか頭がね)に陥っており、まったく更新できておりませんでしたが、また、ボチボチと更新していきます、どうぞよろしく。

そんなことで、入力不全の回復に貢献してくれた、ありがたい本をいくつか紹介します。
相変わらず出力の方は不全(というか、もともと、たいしたスループットじゃない)ですのあしからず。

まずはコレね。
森博嗣「スカイ・クロラ」シリーズ(全5巻)

スカイ・クロラ

スカイ・クロラ
スカイ・クロラ

posted with amazlet on 07.09.18
森 博嗣
中央公論新社 (2001/06)
売り上げランキング: 12482

1巻「スカイ・クロラ」、2巻「ナ・バ・テア」、3巻「ダウン・ツ・ヘヴン」までは、文庫で買って、4巻「フラッタ・リンツ・ライフ」、5巻「クレィドゥ・ザ・スカイ」は単行本で購入、後に文庫で購入していた、前3巻の単行本もコレクション用に購入です。

読み始めると、とてもじゃないですが、文庫が出るまで待てませんでした。(5巻で完結というのところが絶妙だしね)単行本の装丁の美しさがこれまたすばらしい。

 最終巻の「クレィドゥ・ザ・スカイ」(物語の時系列では「スカイ・クロラ」が一番後)では、一人称がそれまでの主要な物語の語り手である、「カンナミ・ユーヒチ」「クサナギ・スイト」「クリタ・ジンロウ」のいったい誰なんだろう???って感じで最後まで物語が進んでいく。

いったい、だれなのかわからない、自我が揺らぎながら錯綜する語り手。

「自我だって、自分がだれかもわからないのに!」。

と、まあこんな感じですが、徐々に自我の不安定な語り手「僕」と、物語の主題とがリンクし、読み手である自分はというと、いつのまにか、語り手である「僕」に、どっぷりと感情移入し、『「僕」は一体だれなんだぁー!』っていう自己同一性の危機に陥っている。

このシリーズに登場する、彼ら、死ぬことのない永遠の子供たちである「キルドレ」は、戦闘機のパイロットとという命を賭したもっとも死に近い任務につくことにより、運命に、生に死に、向き合っている。

永遠の生とは、どれだけ残酷なことであろう。
どれほどの罪を背負いながらも、
どれほど悲しみを繰り返しながらも、
永遠に生きて行かねばならない。

彼らは、永遠の生を知るが故に、死を焦がれるほど渇望する。
自らの生を賭しても得られることのない死を。

彼女はただ一つを望んだ。
僕に殺してほしいと。
それで、僕は、彼女を殺した。
それが、僕の唯一の望みになった。
もし僕が殺さなかったら、彼女は自分で自分を殺しただろう。
それではあまりにも孤独だ。
(スカイ・クロラ)

押井守監督で、来年アニメ映画化されるらしいので、こちらも注目ですね。

ナ・バ・テア

ナ・バ・テア
ナ・バ・テア

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森 博嗣
中央公論新社 (2004/06)
売り上げランキング: 11401

ダウン・ツ・ヘヴン

ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven
森 博嗣
中央公論新社 (2005/06)
売り上げランキング: 8047

フラッタ・リンツ・ライフ

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life
森 博嗣
中央公論新社 (2006/06)
売り上げランキング: 10112

クレィドゥ・ザ・スカイ

クレィドゥ・ザ・スカイ
森 博嗣
中央公論新社 (2007/06)
売り上げランキング: 4917

GIANT KILLING

週刊モーニング(講談社)に連載中の「GIANT KILLING」

Jリーグ弱小チームの監督が主人公のマンガ。
こりゃ面白いです。

GIANT KILLING 1 (1)
GIANT KILLING 1 (1)

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綱本 将也 ツジトモ
講談社 (2007/04/23)
売り上げランキング: 760

野球マンガでは、「クロカン」や「おおきく振りかぶって」とか「ラストイニング」なんかの、チーム戦略や戦術などに関する、けっこう高度な知識や情報が柱になった作品が増えてますね。

こういう作品を見ると、野球って、緻密なデータに基づいた作戦、心理戦のある、とてもインテリジェントなゲームなんだってことがわかって、野球のゲームの見方が変わって面白い。

サッカーマンガでも、こういうアプローチの作品が他にも増えてくるんじゃないかな?

まだ、始まって間もないのに、こんだけ面白いんだから、かなり期待できますね。

今日の一言

最近の週刊モーニングはいい。

 その理由は
 ・「バガボンド」が続いてる
 ・「ひまわり」が新展開 健一沖縄で新たなレジェンド
 ・「チェーザレ」好き。

酔いがさめたら、うちに帰ろう。 鴨志田 穣

酔いがさめたら、うちに帰ろう。
鴨志田 穣
スターツ出版 (2006/11)
売り上げランキング: 3534

鴨志田 穣氏は、戦場カメラマンにして、漫画家西原理恵子氏の元夫。

西原理恵子ファンなので、毎日新聞に連載中の「毎日かあさん」は、毎週日曜日、新聞を手に取ると真っ先に見てました。

主に子育ての事を中心に、サイバラ家の身近なネタで構成された作品の中で、鴨志田さんは、アル中オヤジとして、入院や、離婚の事がネタにもなっていました。亡くなる直前には、酒をやめ、家族と同居していた様子も伝えられていましたが、最後はガンの為に逝去されたそうです。

この作品は、鴨志田さんのアルコール依存症の闘病記をもとにつづられた作品です。いちおうフィクションということですが、実際にはほとんどのエピソードは事実に基づいたものでしょうね。
もとどおり、家族と暮らしたいと考え、依存症を治療するために入院・治療により懸命に復帰に向けた努力を重ね、希望が見え始めたときガンであることがわかる。

ガンについてのことや、家族と一緒に暮らすようになってからのことは、作品中ではふれられていません。しかしながら、作品からは、死と向かい合い、そして受け入れた、鴨志田氏の静かな心が伝わって来ます。元妻である西原氏は、鴨志田氏のお別れの会で、「最初と最後はいいひとでした。」と語っていたとおり、残されたわずかな時間を、愛する人たちとともに生きられた時間は、氏にとってなによりも幸福な時間だったにちがいありません。

過去に、アルコール依存症の闘病を題材とした作品では、中島らも氏の「今夜すべてのバーで」という傑作がありますね。14で初めて口にして、15で一升酒を飲み干して以来、かれこれ30年のつきあい、いまだに酒による失敗も数々というGEROPPAには、γ-GTBの数値とともに、常に心にひっかかっている作品でした。

小説としての完成度は、中島氏の作品が高いと思いますが、本作は、ドキュメントとして、鴨志田氏の感情が痛いほど心に伝わる良い作品だと思います。

GWに読んだ本 4コマ哲学教室 南部 ヤスヒロ 相原 コージ

4コマ哲学教室
4コマ哲学教室

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南部 ヤスヒロ 相原 コージ
イーストプレス (2006/04)
売り上げランキング: 44958

相原コージ氏の傑作「漫歌」を題材に、高校教諭である南部氏が実際の授業で行う哲学についての副読本を書籍化したもの。
なるほど、ヒロシとブタ公はアウフヘーベンしてたのね。