酔いがさめたら、うちに帰ろう。 鴨志田 穣

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酔いがさめたら、うちに帰ろう。
鴨志田 穣
スターツ出版 (2006/11)
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鴨志田 穣氏は、戦場カメラマンにして、漫画家西原理恵子氏の元夫。

西原理恵子ファンなので、毎日新聞に連載中の「毎日かあさん」は、毎週日曜日、新聞を手に取ると真っ先に見てました。

主に子育ての事を中心に、サイバラ家の身近なネタで構成された作品の中で、鴨志田さんは、アル中オヤジとして、入院や、離婚の事がネタにもなっていました。亡くなる直前には、酒をやめ、家族と同居していた様子も伝えられていましたが、最後はガンの為に逝去されたそうです。

この作品は、鴨志田さんのアルコール依存症の闘病記をもとにつづられた作品です。いちおうフィクションということですが、実際にはほとんどのエピソードは事実に基づいたものでしょうね。
もとどおり、家族と暮らしたいと考え、依存症を治療するために入院・治療により懸命に復帰に向けた努力を重ね、希望が見え始めたときガンであることがわかる。

ガンについてのことや、家族と一緒に暮らすようになってからのことは、作品中ではふれられていません。しかしながら、作品からは、死と向かい合い、そして受け入れた、鴨志田氏の静かな心が伝わって来ます。元妻である西原氏は、鴨志田氏のお別れの会で、「最初と最後はいいひとでした。」と語っていたとおり、残されたわずかな時間を、愛する人たちとともに生きられた時間は、氏にとってなによりも幸福な時間だったにちがいありません。

過去に、アルコール依存症の闘病を題材とした作品では、中島らも氏の「今夜すべてのバーで」という傑作がありますね。14で初めて口にして、15で一升酒を飲み干して以来、かれこれ30年のつきあい、いまだに酒による失敗も数々というGEROPPAには、γ-GTBの数値とともに、常に心にひっかかっている作品でした。

小説としての完成度は、中島氏の作品が高いと思いますが、本作は、ドキュメントとして、鴨志田氏の感情が痛いほど心に伝わる良い作品だと思います。

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