百億の昼と千億の夜@萩尾望都

百億の昼と千億の夜@萩尾望都
 
先日、阿修羅展に行ったことは書きましたが、GEROPPAの阿修羅との出会いは、32年前のこの作品です。
 

百億の昼と千億の夜 (秋田文庫)
光瀬 龍 萩尾 望都
秋田書店
売り上げランキング: 12594
おすすめ度の平均: 5.0

5 永遠なる時の果てに
5 ユダに滂沱
5 会いたいって思いながら会えずにいる王へ。。
5 萩尾望都、少年誌デビューの記念的SF作品
5 文明の意味をSF的に読み解くと・・・

 
少年チャンピオンに連載されていたのをリアルタイムで読んでました。
 
当時、中学1年生の少年GEROPPAに、哲学、宗教の世界への扉を開いてくれた作品で、この後の思想体系(ってほどりっぱんもんじゃないけど)に大きな影響を与えた作品です。
 
事実このあとしばらく、この作品の原作の光瀬龍や小松左京、星新一、筒井康隆、眉村卓とかのSFばっかり読んでました。
 
また、作品の主人公である、阿修羅(鬼神だが、本作では少女の姿で描かれている)には、色々な感情を含んだ深い思れをもつようにもなったわけで、阿修羅像を見るために、奈良に行ったり、つい先日も、東京まで行って見るんだから相当なものです。
 
たぶん、阿修羅展来てる人、この作品の影響受けてるひと多いと思いますよ。(たしかめてないけど)
 
こんな作品が「アフリカゾウが好き!」なんていって、皮のかぶったチ○コひぱってるマンガといっしょに、2年近く連載されるんですから、当時の少年マンガ誌はミラクルだったんですね。
 
余談ですが
 
しかし当時の少年チャンピオンすごいですね。
発行部数は200万部、なんとあのジャンプを抜いて、少年誌ではトップだった時期です。
 
1977年9月5日 37号 の目次です。
 
 青春I・N・G (芳谷圭児・やまさき十三) No.3 スーパー・カーとビフテキ
 ドカベン (水島新司 )
 ゆうひが丘の総理大臣(望月あきら)第26話 ほんとは恐ろしいのに!!
 がきデカ (山上たつひこ)原始生活はつらい!!
 ブラックジャック(手塚治虫)第186話 アヴィナの島
 マカロニほうれんそう(鴨川つばめ)第17話 祭ですわん!!
 750ライダー(石井いさみ)キャプテン感激
 百億の昼と千億の夜(萩尾望都・光瀬龍)第三章 梵天 帝釈天
 月とすっぽん(柳沢きみお)クソッタレ住職め〜!!
 しまっていこうぜ!(吉森みき男)
 くたばれ!とうちゃん(とりいかずよし)第13話 月夜の晩も・・・・
 花のよたろう(ジョージ秋山)戦いすんで・・・
 チョッキン(吾妻ひでお)海ってこわい!
 エコエコアザラク (古賀新一)呪われた先生
 ウル (石川球太)第51話大停電SOS
 https://midori.bandaisan.jp/image/jpg/manga/small_h180/1977_9_5_37ch.jpg
 
いやぁ~たしかに豪華執筆陣です。
ドカベン、ガキデカ、ブラックジャック、マカロニほうれんそう、750ライダー、etc
漫画史に残るキラ星のような名作の数々がこの時期同時連載されてたんですね。

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動的平衡~生命はなぜそこにやどるのか@福岡伸一

GEROPPAお気に入りの、福岡伸一先生の新刊です。
 

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか
福岡伸一
木楽舎
売り上げランキング: 99
おすすめ度の平均: 4.0

3 『教祖』に化ける可能性は杞憂か?
5 生命に感じる諸行無常
5 生命について、今一度考え直してみる良い機会をくれた良書
4 啓蒙的良書
5 学者の役割をよく果たしている本

 
本作は、雑誌ソトコトの「エレメント・フラグメント・モーメント−等身大の科学へ−」、ダイナースカード会員誌「シグネチャー」の連載内容を加筆・再編集したものであり、散文的な内容であり、氏の他の著作と重なる内容の部分も多です。
 
とはいいつつ、福岡伸一の哲学的で美しい文章は、あいかわらずで、さらにダイエットの誤った知識を、分子生物学者の立場からばっさりと斬りすてる第3章なんかは、女性にもぜひ呼んでもらいたいし、十分に楽しめると思います。
 
  【目次】
 
  プロローグ ——生命現象とは何か
 
  第1章 脳にかけられた「バイアス」 ——人はなぜ「錯誤」するか
 
  第2章 汝(なんじ)とは「汝の食べた物」である ——「消化」とは情報の解体
 
  第3章 ダイエットの科学 ——分子生物学が示す「太らない食べ方」
 
  第4章 その食品を食べますか? ——部分しか見ない者たちの危険
 
  第5章 生命は時計仕掛けか? ——ES細胞の不思議
 
  第6章 ヒトと病原体の戦い ——イタチごっこは終わらない
 
  第7章 ミトコンドリア・ミステリー ——母系だけで継承されるエネルギー産出の源
 
  第8章 生命は分子の「淀み」 ——シェーンハイマーは何を示唆したか
 
  あとがき
 
 
驚いたのは、福岡氏がライアル・ワトソンの近著2作の翻訳を行っていたこと。本作内でも、デカルトの生物機械論(いわゆるカルティジアン)のアンチテーゼとしてワトソン氏の著作を紹介している。
 
ライアル・ワトソンは、超常現象についてや、百匹目のサル現象の創作などで、とかくあやしいおじさんとして取り上げられてますが、GEROPPAは大好きなんですよね。代表作「生命潮流」は、もっとも影響を受けたいくつかの本のひとつです。
 
そういわれてみると、福岡伸一の中にワトソンと重なるニューエイジャー的な思想が見えてくるような気がします。
ワトソン氏作、福岡氏訳の「エレファントム思考する豚」(邦題)は、年内に発売されるらしいので、こちらも楽しみです。
 

生命潮流—来たるべきものの予感
木幡 和枝 Lyall Watson
工作舎
売り上げランキング: 104497
おすすめ度の平均: 2.5

4 数字化できないことの、夢の力。
1 100匹目のサルの嘘
1 ファンタスティックに歪められた御都合主義の超科学
4 ライアル・ワトソンの主著

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海街diary2「真昼の月」@吉田秋生(小学館フラワーコミックス)

待ってましたよ、発売されましたね。

海街diary2「真昼の月」です。

海街diary 2 (2) (フラワーコミックス)
吉田 秋生
小学館
おすすめ度の平均: 5.0

4 復調か
5 ラヴァーズ・キス?
5 気づきから生まれれる女性のしなやかさ
5 久しぶりに
5 鎌倉と四姉妹家族の肖像

好きなところは、「真昼の月」のエピソードで、藤井さんが幸に対して言う言葉。

「そういうロマンティックなことを考えるのは、たいてい男だから」

そのとおりだよ藤井さん。

ロマンティックというかナイーブというか、しょうがないね男ってやつは。

誰も寝てはならぬ9巻@サライネス[講談社:モーニングワイドコミックス]

GEROPPAが愛して止まないシリーズ「誰も寝てはならぬ」です。
9巻が出てたんですね(えっ!だいぶ前なの?)。

いいかげんで、テキトーなバツイチ(ゴロちゃんはバツ3だけど)中年男たちが集まるデザイン事務所「オフィス寺」のユル~イ日常のお話。

この作品を読んでると、仕事場じゃ、「ああしなきゃいけない」とか「こうじゃないとダメ」とか「早く!早く!」なんて言って、眉間にしわ寄せてる自分がなんか可笑しくなってきますね。

40超えて、こんないいかげんな人ばっかりだけど、コレでもいいんだ(フィクションなんでホントはいけませんが)って思うと肩の力がすうっ~と抜けて来る感じ。

最近、眉間のしわが深くなりかけたオヤジ諸氏にオススメです。

できそこないの男たち@福岡伸一[光文社新書]

福岡伸一さんの文章は、生命の歴史を語る壮大な叙事詩であり、科学的でありながらも、文学的なそれを超える美しさにあふれています。

その美しさは、本書で語られた、DNAを一冊の書物(ヒトをとらえてはなさい秘密の書物)にたとえた、その書物が持つ秘密の力に彩られているからなのかもしれません。

できそこないの男たち (光文社新書 371)
福岡伸一
光文社
売り上げランキング: 65

私たちは、もっぱら自分の思惟は脳にあり、脳がすべてをコントロールし、脳はあらゆるリアルな感覚とバーチャルな幻想を作り出しているように思っているけれど、それは実証さたものではない。消化管神経回路網をリトル・ブレインと呼ぶ研究者もいる。しかしそれは脳に比べても全然リトルではないほど大がかりなシステムなのだ。私たちはひょっとすると消化管で感じ、思考しているのかもしてないのである。人間は考える葦(あし)ではなく、考える管なのだ。

なんとも、食いしん坊のGEROPPAには、すごく腑に落ちる説ではありますが。

生物学って?難しくないの??ってかたもおもしろいのでぜひ読んで欲しいですね。
特に、完全なる生命である女性のために、せっせと色を運ぶできそこないの男たちにこそ。

新・自虐の詩 ロボット小雪@業田良家

業田良家が、自身の傑作「自虐の詩」を、タイトルの副題にしていということで期待の作品です。

新・自虐の詩 ロボット小雪
業田 良家
竹書房
売り上げランキング: 11309

キャラクターたちが、意志をもってストーリーを圧巻のラストへと展開していった「自虐の詩」とは違って、あくまで作者が訴えたいテーマをもって設定された、ラストへ向かって、淡々と物語が進行します。

キャラクターの魅力が、(特にクマモトさんみたいな強力なキャラが登場しないのが)少し物足りないけど、前半のギャグ4コマをかさねながら、後半のシリアスな展開への流れは秀逸です。

ホントに業田良家の絵なのか?ってぐらい、「偶然、心を持ったちょっと旧式の女性型ロボットの小雪」というキャラクターが見事に描かれています。

いい作品ですね。

今日の食事記録

朝 マクドナルド エッグマックマフィン、ハッシュドポテト、カゴメ野菜生活、コーヒー
昼 なし
夜 豚肉のショウガ焼き、ポテトサラダ、ごはん。
発泡酒350ml×2 焼酎×1

きのう何食べた?@よしながふみ(週刊モーニング:講談社)

「きのう何食べた?」 …スラッと答えられる人は、きっと幸せ。

週刊モーニングで連載中のよしながふみの作品。

きのう何食べた? 1 (1) (モーニングKC)
よしなが ふみ
講談社

 40代の美貌の弁護士シロさんと、こちらも40代で美容師のケンジというゲイカップルの日常が、主人公シロさんが作る料理を中心としてストーリーが展開します。

美しさの維持の為、また、ゲイの孤独な老後の蓄財の為、1カ月の食費25000円というつつましさながら、毎回ヘルシーな和食中心のおいしそうな料理が紹介されてて、レシピ本としてもよいです。

今日の食事記録

朝 ごはん、みそ汁(とうふとわかめ)、大根葉とちりめんのふりかけ、卵焼き、梅干し
昼 弁当 今日は撮影するの忘れてました(鶏の唐揚げ、なすの煮びたし、ブロッコリーのおひたし)
夜 鶏の照り焼き丼、みそ汁(かぶの葉、油揚げ)、おでん(とうふ、大根、牛スジ)
  発泡酒350ml×2

私の男@桜庭一樹

「私の男」@桜庭一樹

私の男
私の男

posted with amazlet on 07.11.24
桜庭 一樹
文藝春秋 (2007/10)
売り上げランキング: 249
用があって立ち寄った紀伊国屋でジャケ(装丁)買い。
桜庭一樹の作品は初めてです。

朝の光に真っ白にかがやく流氷の下には、
真っ黒な海がどこまでも続く闇のようにひろがっていて、
流氷が分かつのは光と闇の世界、決して超えてはいけないその境目を
父娘は堕ちていく。

つめたく湿った空気感、臭気をまとった、なまなましく、うつくしいぶん体がすばらしい。

少女ファイト@日本橋ヨヲコ 「講談社イブニング」

少女ファイト いいです。

少女ファイト 3 (3) (イブニングKCDX)
日本橋 ヨヲコ
講談社 (2007/09/21)

今週号(NO.46 2007年10月18日(木)発売)
第23話「自己融解」から

由良木 政子(ゆらぎ まさこ)が、不本意な結果であった体力測定のやり直しを迫る伊丹 志乃(いたみ しの)と小田切 学(おだぎり まなぶ)に向かって言う。

はじめから特別な人間なんていねんだよ、
そいつがやってきたことが特別なんだ。

リバーズ・エッジ River’s Edge 岡崎京子

岡崎京子の代表作にして、マンガ史に輝く最高傑作。

リバーズ・エッジ (Wonderland comics)
岡崎 京子
宝島社 (2000/01)

あたし達の住んでいる街には
河が流れていて
それはもう河口にほど近く
広くゆっくりよどみ、臭い

河原のある地上げされたままの場所には
セイタカアワダチソウが
おいしげっていて
よくネコの死体が転がっていたりする

置き去りの死体(骸骨)、セックス、ドラッグ、妊娠、いじめ、過食症、ひきこもり、援助交際、家庭崩壊、同性愛、動物虐待、放火、焼身自殺、殺人(未遂)と様々な惨劇が、普通の高校生の日常とつながっていく。

いじめの対象で同性しか愛せない少年ヤマダは、セイタカアワダチソウがおいしげった河原の中で、腐りゆく死体を発見する。

自分が生きてるのか死んでるのかいつもわからないでいるけど
この死体をみると勇気が出るんだ

いじめにあい、片思いの同姓には想いを告げることはない。もしかして好きになれるかと考え、付き合った異性は、自意識の中に生きて、自分の事しか話さない。誰にも必要とされることはなく、死んでいないということだけで生きていることを確認する。

もう一人、この死体の愛好者であるモデルで過食症の吉川こずえは死体を見て

あたしはね、“ザマアミロ”って思った
世の中みんな キレイぶって ステキぶって 楽しぶってるけど ざけんじゃねえよって
あたしにもないけど あんたらにも逃げ道ないぞ ザマアミロって

この世界が、平坦な日常が、いじめも、決して届くことのない想いも、過食と嘔吐の繰り返しも、終わることなく永遠に続いていくことの絶望から逃れるために、彼らは死体という希望を共有する。

ヤマダとハルナが橋の上を歩きながら話すシーンでは、河の向こうに海の匂いを感じながら、朝を迎える

ここから海はそんなに
近くないんだけど
たしかに海の匂いがした

汽笛の音も確かに聞こえた

UFOは結局現れなかった。

東の空がぼんやり
明るくなってきた

朝がやってきた

繰り返し語られる朝のイメージは、微かな海の匂いは、閉塞感からの脱却を象徴し、まだ見たことのない新しい世界や未来の比喩で、訪れ来る朝は永遠に続く日常が、また始まることの絶望を象徴している。

しかし、これだけの様々なエピソードを盛り込みながら、物語として見事に完成されている事が奇跡的。作品としての完成度は驚くほど高い。

作者の岡崎京子は、1996年に起こった交通事故によって、休筆が続いているが、現在44歳になった彼女の作品を読んでみたいと、心からそう思う。