ソーシャルメディアがチュニジアやエジプトで果たした役割を考える。

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ソーシャルメディアがチュニジアやエジプトで果たした役割を考える。

先のチュニジアのジャスミン革命(ベン=アリー独裁政権の崩壊)や、今回のエジプトの反政府デモにおいて、Facebookやtwitter,WikiLeaksの役割は大きかったと言われています。

事実エジプトでは、事態を収束する手段のひとつとして、1/26日をもって政府の発令により国内のインターネットを完全に遮断するという事態に至っていますね。

一連の騒動と政変のキッカケとなったのはコチラ。

2010年12月17日、チェニジア中部シディブジドにて失業中だった26歳の男性モハメッド・ブウアジジが果物や野菜を街頭で販売し始めたところ、販売の許可がないとして警察が商品を没収。これに抗議するためにガソリン(もしくはシンナー)をかぶり火をつけ、焼身自殺を図った。(Wikiペディアから抜粋)

事件は、これに端を発し、次々と反政府を叫んで焼身自殺が発生するという、最悪の事態をまねきます。
さらに、これに続いてWiKiLeaksはベン=アリー大統領や夫人の信じられないような贅沢三昧の生活を暴露し、一気に国民の反政府活動に火がついたかたちとなり、結果政権の崩壊と大統領の追放とうかたちで政権交代がなされたわけです。

そして、この事件が飛び火したアラブ各国のうち最大の国家であるエジプトでも一連の運動に関して、ムバラク大統領ら独裁政権の指導者たちは、ベン=アリーの失敗をよく理解出来ていないようですね。

その証拠に、ムバラクは今回のデモを鎮めるために、ベン=アリーが発表し失敗した「次の選挙には出馬しない」といった中途半端なメッセージを出し、おなじように事態を悪化させています。こういった自身の富の移動と権力の継承の為の時間稼ぎが通用すると思っているところに彼らの甘さが見えます。

彼らにとって、ソーシャルメディア以前には力で抑えることのできた些細な事が、自分の政権を倒し権力を奪われることにまで発展するであろうなどと、彼らの想像力では理解できなかったのでしょう。そして、ネット上の情報というものが、膨大な数の大衆を相互に媒介することによって瞬時に相乗的に増幅していくスピードとその爆発力を知らず、いままではうまくいっていたであろうやりかたで対策したため、ソーシャルメディアで情報武装した民衆には、すべて後手後手で中途半端なものになってしまったことが致命的だったと言えます。

おそらく、結果として、ムバラクはベン=アリーと同様に、デモの民衆と結びついた軍勢力の実力行使により、国外に追放されることになるでしょう。

では、彼らが無能な指導者かといえば、決してそのようことはないはずです。30年にわたり独裁政権を維持したムバラク(ベン=アリーは23年)にとっては、政権や自身の命を狙う様々な対抗勢力の次から次へと繰り返される陰謀詭計に、信じられないぐらいの深慮謀略をもって当たってきた結果の長期政権であったはずです。

彼らのように自身の政権の危機に対応する力が非常に強かった独裁政権に対して、ソーシャルメディアやWiKiLeaksといった情報の力によって、政権を打倒する事が出来るのだという実績を作ったことが、今回の一連の動乱ににおけるソーシャルメディアやWiKILeaksが果たした役割であり、今後もさらに存在感と影響力を大きくして欲しいと思います。

独裁的な為政者は、自分の国で起こることすべて自分でコントロール出来るという強い自負と思い込みを持っていますが、ソーシャルメディアにおいては「運営側すらもメディアをコントロールすることができない」ということが、彼らは理解出来ないのかもしれません。

ひとつには、グローバルに展開するソーシャルメディアにとって唯一の理念であり生命線は「民主的な運営がなされていること」。もうひとつは、国境を超えたコミュニケーションが行われている社会がもうひとつそこにあるということですね。

今回でいうと、アラビア語圏のイスラム教徒2億8000万人という国の規模を超えたセグメントでコミュニケーション可能なソーシャルネットワークが形成されていて、普段なら国境という川を挟んだ対岸の火事で、おっとり刀で構えても大丈夫だったのに、今回は、またたくまに飛び火して大火事になっていたというところでしょう。

チェニジアやエジプトの民衆は、ソーシャルメディアを利用することによって、情報社会における民主主義の恩恵に与り、リアルなこの世界が、欺瞞と搾取に満ちていることを認識し(すでに知っていたけど変わらないと諦めていたということも含め)、同様に不満を持つ人々と情報交換を進めるにつれ、悪政の事実や富の独占、それを暴こうとする勢力を迫害する証拠を手に入れます。

権力側の特権であった情報の非対称性による民衆のコントロールといものが、そもそも成立しなくなっているということですね。権力者であることの重要な力を彼らはすでに失っていることに気がついていないのでしょう。

こうしてソーシャルメディアによって新たに低く引き直された政権に対する不満の臨界点は、もちろんそんなことに気がつかない政権の対応が間に合わないタイミングで爆発し、反政府デモによる政権打倒という具体的でリアルな目的を持って行動する集団となって蜂起するに至ったわけです。

チュニジアやエジプトと同様に中東の親米的な国々は民主的な政治が行われているとは言えません。特にイスラム諸国では、政治や法の上位にイスラム教が位置するため、政権が、法や制度で国を律する役割は相対的に小さく、特に産油国ではその豊かさゆえ、不平不満が出にくい(イスラエル問題以外は)社会構造で、チェニジアのベン=アリーやエジプトのムバラクのような独裁政権が続いていたわけですね。

今回の騒動をみると、今後も、エジプトと同時にチュニジアの事件が飛び火した、アルジェリア、イエメン、ヨルダンなどの各国で同じような政権崩壊が進むのは間違いありません。

そして崩壊した親米政権の後に民衆が選択するのは、イランのイスラム革命のような、より宗教的な色合いが強い、グローバルな価値観とは袂を分けたイスラム原理主義的な国家がどんどん台頭してくるのではないでしょうか?

また、イスラム原理主義国家の樹立が次々と実現すれば、今回のアラビア語圏の各国以外に、ペルシャ語、トルコ語、タジー語、タジク語で2億人程度の人口があるアラブ以外のイスラム国家や教徒の間でも同様のことが起こる可能性も十分にあります。

今回のアラブ諸国の一連の動乱について、歴史上かつては世界を席巻したイスラム勢力が復権することで、今後の世界の情勢が大きく変わっていく可能性をもった出来事であり、また、ソーシャルメディアが与える世界の変化への影響に興奮しながら事態を注意深く見守ってみたいと考えています。

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